1.企業への影響
経済産業省の推計によると、家族の介護に直面する従業員が今後増加することが見込まれる中、従業員が仕事と介護の両立が困難となり、身体的・精神的負担から仕事のパフォーマンス低下や介護離職などによる年間損失額は大企業で6億2,415万円/社、中小企業で773万円/社の損失が生じる可能性があるとされています。

そのため、企業は従業員に介護休業制度や介護休暇制度、両立支援制度を活用してもらうなど仕事と介護の両立を支援し、仕事のパフォーマンス低下や介護離職を防ぐことが必要です。
こうした中、育児・介護休業法の改正により、令和7年4月から次の内容が企業の義務となりました。
○介護に直面した労働者が申出をした場合に、両立支援制度等に関する情報の個別周知・意向確認
○介護に直面する前の早い段階(40歳等)の両立支援制度等に関する情報提供
○研修や相談窓口の設置等の雇用環境の整備(※)
次のいずれかの措置を講じる必要があります。
・介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
・介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備
・自社の労働者の介護休業・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
・自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

こうした法改正による制度を用意したとしても、実際に介護を理由に休みを取りやすい職場環境にするためには、経営者や管理職が重要性を認識し推進していくことが大切です。
また、従業員に対する面接やアンケート、相談窓口などを通して、介護の実態を把握することや、相談しやすい雰囲気づくりに加え、残業時間の削減や休暇の取得促進、属人化している業務の見直しなど「働き方改革」を進めることも重要です。
では、大切な従業員が家族の介護に直面し、不安を抱えた状態で相談に来た際、どのように対応したらよいでしょうか。次の手順は一例ですが、対応の参考にしてみてください。
2.従業員から相談があった際の対応
(1)状況の把握

まずは、従業員の話をよく聞き、介護が必要な家族の状態や従業員自身の心身の状況を把握します。そして、従業員は仕事を続けながら介護ができるのか不安なため、「仕事と介護の両立はできること」を伝えましょう。
地域包括支援センターに相談していない場合には家族の居住地にあるセンターに相談に行くよう促すと良いでしょう。
(2)介護に利用できる制度を説明

次に、法律で定められた介護休業制度や社内で設けている介護に利用できる制度について説明します。その際、利用する場合の手続き方法も併せて伝えておくと良いでしょう。
(3)従業員の意向確認と職場内の理解
従業員がどのような制度を利用しながら仕事と介護の両立を図っていきたいか意向確認を行います。休暇の取得や勤務形態の変更をする場合には、本人の承諾を得た上で職場の上司や同僚に情報を共有し、理解を得ることも大切です。また、介護休業のようにある程度長い期間の休みを取る場合には業務の引継なども必要になるでしょう。
(4)介護休業中の側面支援
一般的に介護休業中は無給となりますが、一定の要件を満たす場合、企業が手続きをすることで従業員がハローワークから介護休業給付金を受け取ることができるため、そのための手続きを行います。
また、職場復帰が近くなったら介護の状況や従業員の心身の状況を把握し、職場復帰後の勤務形態などについて相談しておきましょう。
(5)職場復帰後のメンタルケア

職場復帰後、従業員は仕事と介護を両立するために社内の制度を利用しながら働くことになります。一方で、急な休暇取得や短時間勤務などの利用、残業の制限などをすることで、従業員自身が「職場に迷惑をかけてしまっているのではないか」と周囲の目を気にし、それをストレスに感じて離職につながる恐れがあります。
そのため、職場復帰後も、従業員が不安な気持ちを相談できるよう、定期的な面談や相談窓口などの相談体制を整えておくことや職場内での理解が重要です。
厚生労働省でも仕事と介護の両立に関する特設サイトを設けていますので、参考にしてください。
>>厚生労働省 仕事と介護の両立支援制度特設サイト
また、山梨県では育児・介護休業法に対応した就業規則の見直しや山梨労働局への各種助成金申請、職場内の業務改善等の働き方改革に対し、企業の皆様の支援を行っていますのでぜひご活用ください。
>>働き方改革に取り組む企業を応援します!